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最低の午後から脱出する方法

コシがなんとなく重いまま僕はベッドから起き上がれないままでいた。
やることはあるが今の時点では何もやる気は起きない。
気分も悪い。
時計の針の音が異常に大きく聞こえる。

部屋は薄暗く湿っぽい。
そのせいか一瞬今が何時なのかすら判らなくなる。
起きた瞬間から鬱々とした気分。
もちろんその反対に起きた瞬間からそこら中走りまわることだってある。
いろいろだ。
今日はたまたまだ。
目を覚ましたことに敏感に反応したモモタが向こうの部屋とへだてるトビラをカシカシひっかく。
仕方がないので起きることにする。
タバコと酒のやりすぎで頭と口の中は始末におえない状態でそれが気分を左右してるのかもしれない。
何度タバコをやめようとしたことか。
今まで快楽に全てを委ねることによりようやく世界に立ち向かっていける力をもらってきた。
そんなよわっちぃことじゃいけないのは知りつつもだ。
僕は自分の弱さを知っている。
そしてこんな朝のタバコも吸う気になれない日は、もしかしたらこのままやめられるんじゃないかと思いニコレットを口に放り込む。
気分を最大限に利用する、お手軽で単純な貧頭脳的方法だ。
よし、このままいけばタバコとも今日限りだ!

僕は着替えて腰のマッサージに行くことにする。
ついでに昨日取り損ねた印鑑証明ももらいにいこう。
ドアを開けるとほんの少しだけ雨が降ってる。
以前読んだ本の『動物で天気に気分を左右されるのは人間だけ』という一節を思い出す。
傘が嫌いな僕は今のことしか考えず薄い霧雨の中病院へと歩く。
受付のアイソの悪い女は最近居なくなり素朴な女の子が笑顔で対応してくれる。
結局心開く前にあの女はどこかへいってしまった。
もう万券出しても舌打ちとかされないで済む。
おつりを投げられることもない。

マッサージを終えかるくスッキリした足取りで区役所へ向かう。
ここの対応は昔に比べれば良くなった。
しかし<12時から1時の間はお待たせすることがあります>の張り紙を見てそんな想いも吹っ飛ぶ。
なんで人は12時から1時の間に飯を喰わなければならないのか。
特にニッポンの会社の構造がそうなっているのだから、
休憩時間に役所で用事を済ませたい人だって他の時間帯より多いだろうに。
ランチタイムにコックさんが飯を喰うか?
僕はかるい憤りを感じながら役所を後にする。


区役所の前には気の利いた本屋がある。
最近流行りのゴチャゴチャした店内作りのうすっぺらく、あつくるしい、あの本屋とは違いとてもクールな書店だ。
ピンポイントを押さえた品揃えがせまい店内にわかりやすく陳列してある。
そこで僕は東欧インテリアの雑誌と僕の好きな映画監督のアキ・カウリスマキの本をみつけ即購入する。
そういえば飲み友達でユーロスペースで映写技師をしているナガイくんがアキ特集をレイトショーでやるからといってたのを思い出す。
もう終わってしまった。
いつもそうだ、、、。
気が付いた時には何もかもが取り返しのつかない状態になってる。
そして後悔の連続。
短いため息。
泥みたいな雲。

そんなことに落胆しつつも買った本が読めるランチの店を探す。
10何年前から通っているトンカツ屋かそのとなりにある不味いと知ってるチェーンのパスタ屋か。
ちょっと歩いて駅の方で探すか。
悩んだあげく歩く気分にもなれないし、とんかつはちょっと重いのでランチビールでも飲みつつかるくパスタでもと決める。

僕はいつも想う。

もしかしたら今日は旨いかもと。

しかしランチパスタはビールに口をつける暇もなく注文からあっという間に運ばれてきた。
嫌な展開。
何が嫌いかって、ちょっとビールに餃子でも(短縮語例*ちょっとギョービーがてらしてかない?)
ってときに餃子より麺が先にきてしまうこと。
あるいはビールが麺と同時にきてしまうこと。
しかも不安な予感。
きっとこれは冷凍麺だと悟った僕はその日の的中王。
安いチーズがふんだんにかかったナスとソーセージのジェノバ風とかいう、たいへんオイリーでやわい麺のそれを半分食べたところでやめる。
やっぱり不味いからだ。

つまみにもならん。

そして自分を強く責める。
バカさ加減にほとほと嫌気がさしてくる。
不味いと知ってて普段頼まない大盛りとかにしてしまったことも。
いつもそうだ。

ダメと知ってて手を出す自分が最後に後悔することを。
イラついた僕は店内でいつもより重いタバコを買って立て続けに5本吸う。
いつの間にか外はどしゃぶりの雨に変わってる。
最悪の状況に追い込まれた。
そして傘を持って来なかった自分をさらに激しく追い詰める。
ポリシーでやってるのに、あきらめる自分すらここにはいない。
と思うといっそう腹ただしくなっていく。

僕は考える。

アヒルの脳みそで。

さぁこの最低最悪の午後から僕はどうやって脱出しよう?

まず僕はわざと不味いコーヒーを注文する。
うん、やっぱり不味い。
確認する。
そして書く。
一心不乱に書く。
自分の選んだ最低の店で、自分の選んだ最低のコーヒーを飲みながら。
せめてこの最低の午後がワンエピソードとしてSANBUNのネタになればよしと思いながら。
なんの生産性もないこのクソッタレイな気持ちをどうにか良い方へすり替える為に。
そしてどうか今日という日が何かの役に立つように願いながら。

僕はさらに2杯目の不味いコーヒーをわざと注文して最低の気分を一層高める。
朝止めようとしたタバコを次々と灰にしてゆき、気分を悪く、悪く持って行き、ダメ人間ぶりに磨きをかける。
外は小雨からどしゃぶりの雨に変わってる。
いいだろう、望むところだ。
テンションは上がる一方だ。
まず宇宙の広さと歴史だ。
この考えなくして、普通には生きてはいけない。
これを考えればたいていの事は乗り切れる。

僕は考える。

三葉虫の脳みそで。

一瞬じゃん、どうせ。

法則はいつも完璧だ。

過去は消えてき、未来はくり返す。

この長い長い時間の中でアブクのような一瞬の人生の中、人はぶざまにあがくことにより哲学なり思想なり文化を生み出す。

それは果たして尊いことなのか?

しかしこの世界ではそれを尊いことと呼ぶ。
あれ?なぜだ?
生まれた時から個人差はあれどあがくように出来ている。
それは脈々と続く単純な法則にすぎない。
そしてあがきまわって生み出したお話は宇宙の広さと歴史からみればゴミでしかないのに、、、。
どうしてだろう?
自然の摂理に人は動かされているのに無駄なことをやってる風にしか思えない。
これは矛盾する。

無駄を省くのであれば、生まれてから、即死んで土になり化石になってアミノ酸を貯えた岩石になって宇宙に飛ばされ
ぶつかりあい、まじりあい、とけあって、新しい星のほんの一部になったほうが本望だと思うのだが。
結局その完璧な法則をすりかえたお話の中に僕らは生きてるだけなのに、、、。
しかしなぜだろう?
みっともない醜態をさらしながらあがきまわるのを僕は美しく感じる。
星の誕生と同等の光を放ちスパークしてゆくパワーを感じる時僕らは何かを生み出す。
宇宙の手のひらの中でもてあそばれているのを知りつつ悦に浸る。
わかりきった一瞬の為に。

そうか!

ビッグバンから時間が始まり、その膨大な長さに僕らは圧倒されるのだが、もしその膨大な時間も一瞬なのか。
数多くのビッグバンのひとつなのか。
それが立証されれば一瞬もまた自然の摂理となるのではないだろうか。
全ては一瞬でありまた膨大な長さにも引き延ばすことが出来る。
ミクロはマクロだ。

だからこそ人は一瞬の輝きに全てを託すのではないだろうか。

一瞬のようで一瞬ではない人生に。

今はまだビッグバンにより吹き飛ばされてる最中であるが、やがてあるところまでいくと引き寄せられていくという。
そして全宇宙が集まりあい、とてもとても小さく重い物質になり時間もなくなり、ある時点を境にまたビッグバンだ。
そしてそこからまた時間が始まる。
膨大な長さも、もっと長いスパンで考えれば一瞬か。
そうか少しわかった気がする。
長年疑問のひとつであった、なぜ人は一瞬のためにアホみたいにはりきるのか。
そう思うとここで生きて行くこともまんざらではない気がしてきた。
それが自然の行為なのだ。

そこまで考えると気分も少し回復してきた。
外はあいかわらずどしゃぶりの雨だ。
しかし3時間前とは景色の色合いが違う。
透き通った空気の中で物の輪郭がはっきり見え、遮断されていた雑踏のノイズが生きた言葉として浮遊し始める。

ようやく脱出完了だ。

すっきりした僕は残りのタバコを投げ捨て、ドシャドシャの雨の中鼻歌をうたいながら家路へと帰った。

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