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胃ガーン!

暴飲、暴食、不摂生の季節がやってきた!
人は調子が良ければ暴飲、暴食、不摂生に自然と走るものだ。
走らないのはヤンエグかファッションスローフーダーかダイエッターのいずれかだろう。

仕事があろう無かろうとこの緩やかな温度の毛布に包まれる惰眠と、口を通り舌で感じる様々な個体と液体の甘美に酔いしれた脳が、どこまでも僕を揉みほぐしていく。
さらに好きな音楽を大音量で聴いてみる。
カリッとした木製のギターからズンと響くベースギター、どこまでも透き通り長いエコーに寝そべりたくなるようなピアノ音色から、ドンと直にやられるベードラの響き。
波の輪郭を絵に描いたような唄の旋律。
それを忠実に醸し出すクールなステレオスピーカー。
どこまでも体に馴染んでいるソファ。
もう何をやっても許される気分だ。
一生このままにして欲しい。
頼むからそのまま時間が最後までうまく進んで欲しい。
そしてその狭間で想い描いた全てがうまく伝わればいいと願う。
しかしそのためには素面の頭で素面の人と対決しなければならんことが山ほどあるのだ。
仕方がない。
それが人として生きる上での醍醐味なのだろう。
イヤだけど、、、。

法律上許される快楽を手に入れる為の条件はたったひとつ。
身体の調子が良いことだ。
体の調子が悪ければ何をやるにもうまくいかない。
腰が痛くたっても、頭が痛くっても、お腹が痛くっても、すぐそこにある快楽には手を伸ばさない。
大概は「そんな気分じゃないんです、、、」状態だ。
すなわち健康であることは快楽の権利をひとつ手に入れたことも同然と言えるだろう。

そんな僕も今年で3回目の区の無料検診。
今年からはなんとオプションでプラス¥1000出せば胃ガン検診も受けられるという。
おぉ!素晴らしい!そんなこと経験させてもらっていいんですか!?
と行ってきました胃ガン検診。
周りの同年代以上の音楽友達は検診とかに行くと「お前のロックは終わった」とか、
「なんか見つかると怖いから行かない」、の2つに分かれるのだが、僕は身体のことが知りたいので行くのです。
だって医者と話をするのおもしろいから。
本を読むのもいいがやっぱりプロの話は重みが違う。
しかし医者と言えども他の職業人と同じ比率でかなり適当なところ多いんだけど、、
、。
まぁ、こちらがその適当さから読みとれば良いだけの話し。
こっちは趣味なのでね。

前日夜8時以降絶食して当日も煙草も食事も無し状態で保健所に行って来た。
行ってみると予約をしたにもかかわらず2時間待ちだというので、
その後しようと思っていた買い物を済ませ、本屋で立ち読みして時間を潰した。
仕方ねぇな、、、。
と、2時間後。
受付のシルバーセンター派遣みたいな2人のオバハンは立ち話をしながら事務的に番号札を僕に渡し1番のドアから入るように言った。
ドアを開けるとそこは個室になっていて張り紙にパンツイッチョウになるように指示がある。
言われた通りパンツイッチョウになり次のドアを開ける。
そこには時代物の看護婦がいて検尿コップみたいのに入った白い液体を何も言わずに渡す。
これが噂のバリウムか、と感慨深く持った検尿コップの重さに腕が下がる。
「看護婦さん、これ重いねぇ」と僕が興奮して尋ねているにも関わらず、
「そぉ?」の一言で終わってしまう。
まぁ毎日何十人にバリウム渡してればそんなリアクションもしょうがない。
しかしこういう人たちは受付のオバハンも含め給料いくらもらっているのだ?
なんか働くのがイヤになってくる。
まぁいい。
時代物の看護婦が言う。
「それでは、一気に飲んでください」
まじかよ。
この重くて高濃度の液体を一気か、、、。
仕方ない、意を決してバリウムを一気に飲む。
か弱い繊細な喉に強引に押し入ってくる。
窒息しそうになりながらも完食。

さて次のドアを開ける。
メインステージだ!
さすがメインだけあって豪華だ。
12畳ほどの白い壁に覆われた無機質な部屋の真ん中にマシーンが鎮座している。
ヒト一人が寝れるくらいのベッドの上に覆い被さるようにレントゲンマシーンみたい
なものが設置されている。
宇宙飛行士の重力体験マシーンみたいなヤツだ。
ぼうっと突っ立ているとハイがかるく歪んだスピーカーからそのベッドに寝るように指示が出された。
振り返ると4面のうちの1面はガラス張りになっていて向こう側には何やらボタンやらレバーのついたデスクに白衣の医者が座っている。
まるでレコーディングスタジオのようだ。
60年代のジョージマーティンの幻を見る。
これは親近感がわく。
しかしそのエンジニアは(イメージとしては)鼻くそをほじりながらの流れ作業だ。
いきなり挨拶もなしに「仰向けにベッドに寝て手で棒を掴んでください」
僕は言われたとおり仰向けになり頭の横にある棒を掴む。
「動かします」
僕は寝たまま右に傾けられた。
ベッドごと動いているのだ。
ちょっとおもしろい。
「左に動かします」
僕は左に傾く。
「上に動かします」
僕は棒をしっかり掴む。頭に血が上る。
「下に動かします」
僕はずり落ちないように棒をさらにしっかり掴む。
「うつぶせになってください」
僕はうつぶせになる。
「左に動かします」
僕は左に傾く。
「上に動かします」
僕は棒をしっかり掴む。頭に血が上る。
「下に動かします」
僕はずり落ちないように棒をさらにしっかり掴む。
そしてやっと人間らしいコミュニケーション溢れるセッションが始まる。
「そのままの体を右にねじってみてください」
僕はねじる。
「あちょっとだけ左に戻して」
僕は素早い反応でちょっとだけ左に戻す」
「はい、そのままで」
僕はそのまま固まる。
「はい、終わりです」
なんだ、もう終わりか。
2時間待ちのあっという間のジェットコースターみたいだ。
僕は何も言わず部屋から出る。
受付のオバハンはまるで止まったら死んでしまうマグロのようにまだ喋っている。
僕を見るなり下剤を2錠渡し、
「今ここでやっていったっていいのよ」
と銀歯を鈍く光らせて笑った。

というわけで僕の初めての胃ガン検診は終わった。

2週間後、、、。
<再精密検査>のハンコが押してある手紙が僕の家のポストに投函されていた。

次の検査からは実費となる。
胃カメラの設備のある病院ならどこでもいいのだ。
母アツコが今自分が通っている病院がいいからと紹介してくれた。
僕らは早朝の千駄ヶ谷で待ち合わせをした。
晴れた朝の千駄ヶ谷駅前はどこまでも広々としていて空気も新鮮で気持ちが良かった。
二人で歩きながら母アツコは黙る僕に一方的に話しかけてた。
僕はもういい歳なのに母親といっしょに病院に向かうことが恥ずかしかった。
母アツコは「病院の先の中華料理屋がおいしいから今度行こうね」としきりに言った。
僕は手をにぎったら握り返してくる母を想像した。
病院に着き待合室のビニールのソファに並んで座りながら母は、
何度も何度も僕に受付の方法やこの病院の簡単な部屋の配置を説明した。
僕が問診票に記入している字を見ながら「私の字も汚いけどあんたの字も汚いわね」と言って泣いた。
そして名前を呼ばれると手を振りながら自分の治療室へ向かって行った。
ひとり残された僕も名前を呼ばれ、胃カメラ検査の予約を取り採血をしてお金を払い、
今年一番の晴天の中、千駄ヶ谷のプラタナスの道を一人仕事場に向かった。

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